弁護士 中岡 正薫
2015年04月27日(月)
まんじゅうこわい
暇をもてあました町人たちが、世の中の怖いものを言い合います。「クモ」「ヘビ」「アリ」などと言い合っていると、一人の男が「いい若い者が情けない。世の中に怖いものなどあるものか」と皆を馬鹿にします。怒った他の男が「本当に怖いものはないのか」と聞くと、うそぶいていた男はしぶしぶ「まんじゅう」と呟きます。男はその後、「まんじゅうの話をしているだけで気分が悪くなった」と言い出し、隣の部屋で寝る(ふりをします)。
残った男たちはイタズラ心を起こし、「あいつは気に食わないから、まんじゅう攻めにして脅してやろう」と、金を出し合い、まんじゅうをたくさん買いこんで、男の寝ている部屋へどんどん投げ込むのです。すると、男はひどく狼狽した(ふりをしながら)、「こんな怖いものは食べてしまって、なくしてしまおう」「うますぎて、怖い」などと言ってまんじゅうを全部食べてしまいます。
一部始終をのぞいて見ていた男たちは、男にだまされていたことに気付き、怒った男達が「お前が本当に怖いものは何だ!」と聞きます。
すると、男は言います。
「今は濃いお茶が1杯怖い」。
この話の主人公のすごいところは、行き当たりばったりで獲得目標(ここでは饅頭)を得たのではなく、怖いものを言い合っている時点から他の男の心理を計算して戦略的に饅頭を獲得したところにあります。
あえて挑戦的な発言を男達に投げかけて復讐心を煽り、別室に引きこもることで男達にイタズラの打合せの機会を与えて自分達の行動に正当性を与え、同時に饅頭が怖いという荒唐無稽な話をも妄信させているのです。
そして、最後の一言でしてやられた男達も脱帽せざるを得ません。
交渉術として学ぶところの多いお話です。
弁護士 上椙 裕章
2015年04月22日(水)
朝の戦い
朝は戦いだ。起きた瞬間からすでに戦いは始まっている。
娘「おはよう」
父母「おはよう」
母「今日はお父さんと幼稚園行く?」(先制攻撃成功!!)
父「えっ、でも昨日お父さんと行ったよね?」(くっ、先手を取られた)
母「今日はお父さん、車でお仕事いくみたいよ」(さらに追い打ち)
父「いや、でも・・・」(・・・)
娘「お父さんと行く!」
理不尽に娘を叱り、「お父さんなんて嫌い!」と泣かせる最終兵器もあるのだが、
父娘ともに、心に深い傷を負うのでおいそれとは使えない。
果たして、朝の苛烈な戦いに敗れた父は、
娘と仲良く手をつないで登園中、
まったく意味不明の娘の歌を聴きながら、
明日の戦いへの英気を養うのであった。
弁護士 上椙裕章
事務局 東広島事務所
2015年04月14日(火)
小さな奇跡
先日、洗面所で左のコンタクトをはずしてケースに入れようとしたとき、ケースの縁ではじいてしまったのか、チッという音とともに一瞬のうちにコンタクトが消えてしまいました。使っているハードコンタクトには、探しやすいように薄いピンク色がついています。
どうせ、洗面台の中か足下付近だろうと、のんきに探し始めましたが、探しても探しても見つかりません。
「あの一瞬でどこにいくのよー!」と、叫びながら大慌てで懐中電灯を持ち出し、這うようにして探しましたが、どこにもありません。髪の中、服の中、洗濯カゴの中、スリッパ、タオル棚の裏、洗濯機の周り、洗面所内で考えられるところは全て探したつもりです。
ハードコンタクトのため替えはありません。眼科に行って、診察を受けて、注文して、受け取りに行って・・、それまで少し度の合わなくなったメガネ生活?それともメガネを新調する方が早い?色んなことが頭の中を駆け巡ります。
「なんで、あのときもっと注意しなかったんだろう・・。なんで、メガネを新調してなかったんだろう・・。」一瞬の出来事にあらゆることを後悔しました。一度はあきらめて寝ようとしましたが、どうしてもあきらめきれません。深夜に起きて、またごそごそと。でも、やっぱり見つかりません。
「終わった・・。」そう思い、力尽きて廊下に座り込んだ視線の先にはピンクに光るものが。
そうです、見つけました。洗面所を飛び出し、2メートル離れた階段前の廊下の真ん中に堂々と落ちていたのです。遠くまで飛んでいたことにも驚きましたが、なにより、家族が階段を上ったり下りたり、何度も繰り返す中で、誰に踏まれることもなく、無事に存在していたということが奇跡としか思えません。光に照らしても目立った傷もないようです。
「信じられない。」何度も呟いていました。小さな奇跡に感動しまくった出来事でした。